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フィールドワークレポート(2)

学生たちこんなことしてます! 2009/03/13

入学前教育のフィールドワークレポート第2弾です。赤字は教員のコメント、青字は引用です。地図、図版はインターネット公開なので掲載しませんが、レポートには使えます。

地元宮崎県高鍋の舞鶴城趾に残る石像についてのレポートでしたが、簡潔ながらよく整理されて読みやすくまとまっていたので感心しました。実際に高鍋だけでなく、串間市の永徳寺まで聞取りに出かけられた意欲はすばらしいと思います。入学後もこの意欲を持続していただきたいものです。

寒山拾得の石仏についてのレポート
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 宮崎県児湯郡高鍋町の舞鶴城二の丸跡に、地元の人々に「かんかんさん」という呼び名で親しまれている寒山拾得の石仏がある。
さて内容についてですが、「かんかんさん」という通称名は、話者との会話体で表記するときには便利な表記ですが、民俗学では間違いかも知れないとおそれがある場合でも、話者の話した通りの表現を重視する場合はカンカンサンまたはカンカンさんと表記する場合が多く、何度も出てくると読みにくいので「」はつけないほうが普通になっています。しかし、「かんかんさん」でも間違いではありません。

(写真1)taniyama1.jpg

高さ九十五センチの中国唐代の奇僧、寒山、拾得の石像で、頭から顔面にかけて裂傷がある。現状として確認することはできなかったが、向かって左側の石仏の裏面には左のように刻まれている。
 

天文十八年巳酉孟夏下浣日富春山人一蘭老袖襲安置
                 大工 文甫  
             

つぎに石像の刻名ですが、現物の写真または墨で刻名を写しとる拓本(これには許可が必要です)があると、フィールド調査の説得力が高まりました。一目「天文十八年巳酉」は誤りです。干支では巳
はありませんので、己の文字の誤りとわかります。この文字があるとすれば酉の位置になりますから、歴史学の知識があると現物をみなくとも誤りとわかるのです。己・已・巳の文字は我々もまちがいやすい文字ですが、干支のどの位置にくるかを知っていればつぎからは間違えなくなります。


これによると、この二体の寒山拾得の石仏は、天文十八年の孟夏の下旬に、富春山(永徳寺)に一蘭和尚によって安置された。永徳寺は、宮崎県南の串間市にある。

(マピオン宮崎県地図に旧高鍋藩領を示した図)

串間市は江戸時代まで、高鍋藩の飛び地の領地であった。もともとは福島(現串間市)にあったものを、藩主秋月氏が江戸の藩邸(東京麻布本村町)蝦蟇池の畔に安置した。明治時代になって、十二代目当主秋月種樹公が神奈川県の片瀬(藤沢市)の別荘に移した。その後、大正時代の初期に種樹公の漢詩碑と共に高鍋に安置された。この石仏には次のような伝説がある。
 

江戸の藩邸麻布屋敷に安置されていた時、或る夜時ならぬ時分に『鰯売り、鰯売り』と呼び声高く巡り居たる者あり。宿直の者が怪しき輩と思い一太刀切り付けたがその夜宿直の者は高熱を発して苦しんだ。翌朝寒山拾得の石像に、頭から背にかけて刀傷が出来ていた。その後秋月家に何か異変があると、この傷跡がはっきり出て、夜泣きして知らせたという。     (秋月種英公遺稿より)


「秋月種英遺稿」は『高鍋藩史話』からの引用でしょうか?現物を評者も読んでいないのでよくわかりません。今回のレポートではこれでもよいのですが、原典はおそらく漢文か仮名交じりの文語体で筆記されたものと推測されます。これも大学生となれば、できるだけ貪欲に原典でどのように描かれているかに迫り、正確なニュアンスを知ることが必要となります。

(写真2、3)taniyama2.jpg    taniyama3.jpg


以前、高鍋町立歴史資料館に勤務されており、高鍋の歴史に詳しい石井正敏氏に話しを聞くことが出来た。石井氏は、以前寒山拾得の石仏について調査したことがあるそうだ。石井氏によると、寒山拾得の石仏にはこれと定まったご利益は伝えられていないが、右の伝説からか、秋月家の守り神のように考えられている。霊験が著しく、祈願がよく叶うと地元住民の信仰を集め、年中献花が絶えることがない。とくに、最後の秋月家当主である秋月種英公の妻、須磨子氏がこの寒山拾得の石仏を大切にしており、東京へ引き上げる際には、城跡近くの新小路地区の住民や、懇意にしていた石井氏らに「この石仏を大切にしてくれ」と言ったそうだ。それ以後、毎年五月十日に「かんかんさんの祭り」を行っている。川南町通浜にある智浄寺の住職を招きお参りして、その後、参拝客を接待するというものだ。

 この伝説と同じものと思われる話が、滝沢馬琴が編纂した随筆集の「兎園小説」に載っている。文政八年(一八二六年)に、滝沢馬琴が友人の山崎美成・屋代弘賢らと共に、「兎園会」を起こした。毎月一回ずつ相会して、各自持ち寄りの奇事異聞を記した文稿を披講し、これを回覧した。それをまとめたものが「兎園小説」である。その話は、麻布学究こと大郷良則が「麻布の異石」という題名で出典しているので紹介する。


春秋伝に、石の物いひし事を載せて、神霊の憑りたるよしを論ぜり。古来其例多ければ、今贅するに及ばず。抑余が住める麻布の地に、見聞せし異石五種あり。其一は、秋月家の園中に三尺許なる寒山拾得の石像、いつの此にや。行夜の卒の蹤より慕ひ来けるを、斬り払ひけりとて、其瘢痕を存す。・・・以下後略。


 ところで、石仏の題材になり、信仰の対象にもなった寒山拾得とは何者であるのか。寒山、拾得ともに唐代の奇僧で、両者とも実際に実在したかは不明という人物である。寒山は、現代の浙江省台州市天台県の西方七十里の寒厳幽窟に住んでいたため、寒山と呼ばれた。カバの皮をかぶって大きな木靴を履いていたという。拾得は、天台山国清寺(天台宗総本山)の豊干(ぶかん)に拾い養われたので拾得と称し、国清寺の行者になった。彼らは、乞食同然の生活をしたり、時に寺域のなかで奇声、叫声、罵声をあげたりなど非僧非俗の風狂の徒であったが、仏教の哲理には深く通じていた。詩作をよくし、寒山は文殊菩薩、拾得は普賢菩薩の再来と呼ばれることがある。また、師匠の豊干禅師を釈迦如来にみたて、あわせて「三聖」あるいは「三隠」と称することもある。宋代以後、彼らの生き方に憧れる禅僧や文人によって、文学や美術の画題とされている。

(伝顔輝作 寒山拾得図)

写真や地図、画像も入れていただきました。写真は自分で撮ったものは問題ありませんが、地図や寒山拾得図は著作権があるので、今後は注意深く接してください。レポートに使用するものは問題ありませんが、大学生になるとWEB上での公開や出版物(優秀な卒業研究は『学生論集』に掲載)になる機会もありますので、所蔵者の許可が必要となることも知っておきましょう。

 話は高鍋の寒山拾得の石仏に戻る。石井氏の話によると、現在高鍋にある寒山拾得の石仏は、おそらく、文甫という名の中国人によって串間で造られた。石像裏面の銘から詳しい手がかりはないものかと、高鍋藩寺社帖を調べたところ、高鍋の松本にあった秋月家の菩提寺竜雲寺の末寺が、串間市の羽ヶ瀬村に三寺あり、そのうちの一寺が「豊春山永徳寺」であった。実際に永徳寺に行ってみたが、残念ながら資料となるようなものを見つけることは、住職もほとんど知らないようだったそうだ。
 
以上のことが、私が調べたことである。資料自体が少なく、また、過去に調べた人も少ないため、これだけのことしか調べることができなかった。刀傷ができ、変事があると夜泣きするようになったという伝説が生まれた時代背景には何があったのか。兎園小説から、おそらく江戸時代に生まれたものだと推測されるが、その時の江戸、あるいは秋月家近辺にどのような動きがあったのか。それを知ることが出来たら、もっと深く掘り下げることができたかもしれない。しかし、今の私の力量では、そこまで調べることができなかった。もっと効率のいい具体的な調査方法を、大学で学んで身につけたい。

カンカンさんの移動の軌跡追究も歴史的にはおもしろい課題でしたし、石像も夜泣き石伝説に属するので、そちらからの追究も十分研究の対象となります。寒山拾得は日本では経巻と箒をもった画像で有名ですが、庶民の信仰の対象ではありませんでした。中国文学に『寒山詩』があってこちらも江戸時代には武士の素養として読まれていました。石像タイプは長野県妻籠などにもあって、ながく道祖神とまちがわれてきたそうです。5月10日の儀礼化も近代のもののようですが、興味深いものがありますね。今後とも関心をもって調べていただくと、立派な研究テーマとなりそうです。


(参考資料)
・ 安田尚義『高鍋藩史話』(鉱脈社)
・ 滝沢馬琴「兎園小説」の第十二集[乙酉冬十二月朔於著作堂集会席上各披講了]『日本随筆大成〈第二期〉』一巻(吉川弘文館)
・ 石井正敏『寒山拾得の石像 「かんかんさん」について』高鍋町立歴史資料館配布
・ フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」
・ 『居酒屋 なんじゃろか』(http://nanjaroka.com/index.html)
・ 『Mapion都道府県地図』(http://www.mapion.co.jp/map/japan.html)
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